Moveworks(米国・社内サポート自動化)
Moveworks(米国・社内サポート自動化)
Moveworksは、2016年創業シリコンバレー発のスタートアップで、社内ITや人事、総務などの従業員サポート業務を対象に、生成AIを用いた対話型エージェントを提供している。SlackやTeamsといった業務チャットに統合される形で、従業員が自然言語で依頼を送ると即時に処理が完了する構造を実現している。この技術は、単なる自動応答ではなく、業務の即時完結を支える「実行型のAI」として注目されている。
2025年3月、ServiceNowは社内サポート業務のAI自動化領域で先行していたMoveworksを買収すると発表した。MoveworksはすでにITに加えて人事・総務・財務など幅広い部門に導入されており、今後はServiceNowとの技術統合を通じて、全社的なAgentic AI(自律型エージェント)の活用をさらに拡大するとしている。
1. Moveworksの生成AI関連技術・プラットフォームの特性
Moveworksは、社内ITや人事、総務といった従業員向けサポート業務を対象に、自然言語での対話による自己解決支援を可能にするAIプラットフォームを提供している。最大の特徴は、生成AIと業務システムの統合により、単なるFAQ応答にとどまらず、実際の業務処理(パスワードリセット、機器申請、チケット発行など)までを含めたエンドツーエンドの対応が可能な点にある。
中核となるMoveworks AIアシスタントは、SlackやMicrosoft Teams、Webチャットなどのチャネルを通じて、ユーザからの自然言語による問い合わせを受け取り、社内システムと連携して即時に対応する機能を持つ。組織ごとにカスタマイズされたナレッジベースやチケットシステム、IT資産管理ツールとの連携を通じて、適切な情報提供や操作支援を実現する。このアシスタントは、独自開発のMoveLMと、OpenAIのGPT-4、Anthropic Claude、Google Bardなど外部の汎用LLMを組み合わせたマルチモデル構成を採用している。各モデルは用途に応じて選択され、ユーザからの問い合わせに対して適切な生成AIが応答を担う設計である。また、MoveworksはLLMゲートウェイと呼ばれるルーティング機構を備えており、ユーザ企業ごとの業務環境に応じてモデルを動的に選択する柔軟性を持つ。これにより、用途ごとに最適な応答を生成するAIアーキテクチャが実現されている。
2. 業務プロセスに及ぼす構造的影響
Moveworksが提供するAIエージェントは、従来はIT部門に依存していた多くの定型的な依頼・問い合わせを自動化し、処理時間を数分から数秒に短縮している。特に、従業員が日常的に利用するSlackやTeams上で対話的に完結できる点は、業務フローの分断を回避し、サポート業務における待機時間やチケット滞留の解消につながっている。
また、複数の業務アプリと接続することで、従業員がIT部門や人事・総務などに問い合わせることなく、自らのリクエストを自然言語で処理できる「セルフサービスの自律化」が進展している。従業員支援のあり方を受動型から能動型へと転換する大きな構造変化と捉えられる。
※以下の節と情報源は、PDF版全文をご参照ください
- 3. 導入・活用事例
- 4. まとめ(知見・示唆)
- 情報源一覧(出典リンク含む)
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