ServiceNow(米国・企業向けITプラットフォーム)
ServiceNow(米国・企業向けITプラットフォーム)
ServiceNowは、ITサービス管理(ITSM)や顧客サービス管理(CSM)など、企業の基幹業務プロセスを支えるプラットフォームを提供してきた。近年では、生成AIを組み込んだ「Now Assist」を通じて、業務遂行に必要な判断基準・手順・ナレッジといった「業務知」の生成と活用を可能にする仕組みを提供し、企業における業務変革を支援している。
1. Now AssistとNow LLMによる「業務知」※ の生成と活用支援
ServiceNowは2023年、業務支援プラットフォームに生成AIを組み込んだ「Now Assist」を発表した。これは、同社が独自開発した業務特化型の大規模言語モデル(Now LLM)を含むAI技術群を基盤とし、企業の各業務領域(ITサービス管理、顧客サービス管理など)において、以下のような機能を提供している。
- インシデント要約の自動生成
対応履歴やログをもとに、インシデントの要点を生成AIが自動で要約し、エージェントの迅速な対応を支援する。
- ナレッジ記事の自動作成
過去のケースや問い合わせ内容に基づいて、Q&A形式を含むナレッジ記事の草案を自動生成し、ナレッジベースの構築・拡充を支援する。
- ナレッジ記事の自動分類・タグ付け
Now Assist Skill Kitを活用することで、記事内容に応じたカテゴリやタグを生成AIが自動で付与できるようになる。
- ナレッジ記事へのフィードバック収集と改善支援
ユーザーからの評価やコメントを収集し、そのフィードバックを通じて人手による改善活動につなげる仕組みが用意されている。
- 仮想エージェントとの連携による対話支援
Now Assist in Virtual Agentでは、自然言語でのやり取りを通じて、ユーザーが直感的に情報を取得・操作できる。
これらの機能は、企業における「業務知」の自動生成・構造化、及び実務での活用を支援する。
※:業務プロセスの中で蓄積される経験的知見や判断ノウハウ、対応パターンなどを、本稿では「業務知」と呼称する。従来は属人化・暗黙知化しがちだった情報である。
2. 「業務知」循環による業務プロセスの変化
従来、「業務知」は各担当者に属する暗黙知や、静的に文書化された形式知として管理されていた。このため、ナレッジの展開や再利用には限界があり、対応のばらつきや情報の断絶が課題となっていた。Now Assistの導入により、ログや対応記録から抽出された知見が自動で形式知化され、フィードバックを通じて評価・改訂され、次の業務に再活用されるという「業務知の循環」が可能となりつつある。
「業務知の循環」は業務プロセスに以下の変化をもたらす。
- 対応の標準化と迅速化
過去の対応から要点を要約し、次の業務に反映することで、属人的な判断や対応のばらつきを抑え、業務の一貫性とスピードを向上させる。
- ナレッジの質と再利用性の向上
自動分類やユーザーフィードバックを活用することで、ナレッジの検索性と再利用性が高まり、対応品質の向上につながる。
- 部門横断の知識共有
ITサービス、カスタマーサービス、人事サービスなどに蓄積された知見が統合・再構成され、部門間での知識の再利用が可能になる。
- 状況適応型の支援提供
Virtual Agentと連携し、利用者の職種や過去のやり取りに応じて最適なナレッジが動的に提示されることで、パーソナライズされた支援が実現される。
このように、Now Assistによって「業務知」の循環が支えられることで、企業内の知識資産の有効活用が進み、業務変革に向けた基盤が形成されつつある。
※以下の節と情報源は、PDF版全文をご参照ください
- 3. 導入・活用事例
- 4. まとめ(知見・示唆)
- 情報源一覧(出典リンク含む)
分析記事全文はこちらからダウンロードできます ↓生成AI特集「海外企業の事例分析」ServiceNow