C3.ai (米国・企業向けAIプラットフォーム)
C3.ai (米国・企業向けAIプラットフォーム)
C3.aiは、2009年の創業当初は「C3 Energy」としてスマートグリッドおよびエネルギー業界向けソリューションを展開していた。その後、2016年に「C3 IoT」へと改称し、IoT技術を活用したアプリケーション基盤へと進化。さらに2019年には現在の社名「C3.ai」へと再改称し、現在では業務プロセスの再設計を支える企業向けAIプラットフォームの提供に注力している。
1. 生成AI関連技術・プラットフォームの特性
C3.aiは「C3 AI Platform」と呼ばれる、企業向けのAI・機械学習(ML)アプリケーション開発環境を提供している。このプラットフォーム上で動作する形で、生成AI機能を組み込んだ「C3 Generative AI」を2023年より展開している。
C3 AI PlatformとC3 Generative AIの主な特徴を以下に示す。
- モデル駆動型アーキテクチャ(Model-Driven Architecture)
C3.aiの独自モデル言語(MLL)により、データスキーマ、業務ロジック、AIモデルを分離して記述可能。これにより、データ連携やAIロジックの変更を柔軟かつ効率的に行うことが可能となる。
- プラットフォーム非依存(Cloud-Agnostic)
AWS、Azure、Google Cloudなどの主要クラウドに加え、オンプレミス環境にも対応可能。これにより、政府機関や製造業など、運用環境に制約のある組織でも柔軟に導入できる。
- エージェントオーケストレーション(Agent Orchestration)
C3 Generative AIでは、複数の「エージェント(自律型プロセス)」が役割を分担し、データの取得 → クエリの生成 → RAG(リトリーバル強化生成) → ワークフローへの統合までを連携して実行する。この設計は2023年後半に特許を取得しており、複雑な業務処理の自動化と高信頼な判断支援を実現している。
2. 業務プロセスに及ぼす構造的影響
C3.aiのソリューションは、単なる一時的な業務効率化ではなく、業務プロセスそのものを再設計し、再利用可能で進化可能な構造へと変革するための基盤を提供している。ここでは、その構造的な影響を3つの観点から整理する。
- 業務知識の形式知化と再利用によるプロセス設計の柔軟化
多くの企業において、業務ロジックや判断基準は人手や文書の中に埋もれているため、業務プロセスの設計や変更には大きな手間を要する。
C3.aiでは、業務知識をデータスキーマ、業務ロジック、AIモデルとして構造的に分離・定義できるモデル駆動型アーキテクチャを採用しており、業務の各構成要素を個別に管理・更新することができる。たとえば予測保守の業務では、設備種別や運用条件ごとに異なる故障予測ロジックを独立したモジュールとして定義することで、業務プロセスの柔軟な変更を可能としている。 - 非構造データの活用による判断支援と説明性の向上
従来の判断業務では、マニュアルや報告書、担当者の経験知など非構造な情報資産が暗黙的に使われていたため、属人性が高く、標準化が困難だった。
C3 Generative AIは、こうした非構造情報に自然言語でアクセスし、関連情報の検索、要約、提示を自動で行う判断支援インターフェースを提供している。複数のエージェント(自律型プロセス)が情報取得・照会・生成・出力統合の役割を分担し、質問に対して文脈に即した回答を生成する。これらのプロセスを連携させるエージェントオーケストレーションが、この仕組みを支えている。
その結果、現場担当者は専門的な分析知識がなくても適切な判断材料を得ることができ、判断の質と説明可能性(Explainability)を大幅に向上している。 - 実行結果に基づく業務設計の継続的な改善
業務プロセスの高度化には、AI導入後の運用結果を反映し、継続的に業務設計を見直す仕組みが不可欠である。
C3 AI Platformでは、各プロセスでの入力データ、判断ロジック、実行結果を一貫してトラッキング・蓄積できるため、その情報を分析担当者やプロセス設計者が評価・改善の材料として活用することができる。たとえば、予測保守のモデルが誤検知を繰り返す場合、実行ログをもとに閾値やルールを修正する、あるいは再学習データを更新するなど、実務運用を踏まえた改善を可能としている。
※以下の節と情報源は、PDF版全文をご参照ください
- 3. 導入・活用事例
- 4. まとめ(知見・示唆)
- 情報源一覧(出典リンク含む)
分析記事全文はこちらからダウンロードできます ↓
生成AI特集「海外企業の事例分析」C3.ai