Palantir(米国・データ分析)
Palantir(米国・データ分析)
Palantir は、政府機関向けの Gotham や民間企業向けの Foundry といった大規模データ統合プラットフォームを展開してきた。近年では、生成 AI を活用した「AIP(Artificial Intelligence Platform)」を通じて、企業内の意思決定プロセスそのものを対象とした支援に踏み出している。Foundry で構築された業務構造(Ontology)を活用し、AIP ではその構造に基づく判断プロセスをノーコードで設計・自動化する仕組みを提供している。これにより企業は、過去の事例や実行結果をもとに判断基準を見直し、再活用する循環的な意思決定プロセスを構築できるようになりつつある。
1. AIP による意思決定プロセスの支援
Palantirは2023年に「Artificial Intelligence Platform(AIP)」を発表した。AIPは、同社が提供する既存のデータ統合・分析プラットフォームであるGotham(政府機関向け)やFoundry(民間企業向け)と連携して動作し、生成AIを活用した高度な意思決定支援やプロセス自動化を実現するAIプラットフォームである。
AIPを用いた意思決定支援の中核には、「Ontology」と呼ばれる業務データ構造がある。Ontologyは、業務オブジェクト(たとえば注文、顧客、在庫、請求など)とその属性・関係を構造化したデータモデルであり、意思決定に必要な情報を意味的に整理・接続する役割を担う。Palantirでは、データの自動統合・クレンジングを司るFoundryの機能「HyperAuto」を通じて、ERP(Enterprise Resources Planning)などの業務システムのデータを統合・変換し、Ontologyを構築する。
AIP の主要機能の一つである AIP Logic※1 はこのOntologyを基盤として動作し、Ontologyを活用しながら、ノーコードで意思決定プロセスを設計・自動化できる環境を提供する。顧客は、AIP Logicで以下のようなブロックを組み合わせて、意思決定プロセスを設計できる。
- Transform ブロック:文字列変換、数値計算、形式の調整等の前処理や変換・加工を行う。
- Get Object Property ブロック:Ontologyから特定のプロパティを取得し、判断や処理に活用する。
- Use LLM ブロック:自然言語のプロンプトを通じてLLMを活用し、対話の流れや状況に応じて意思決定の提案を生成する。
- Apply Action ブロック:LLMの出力に基づき、Ontology上のオブジェクトに対して状態変更や通知送信などのアクションを実行する。
これらのブロックを組み合わせることで※2、Ontology上に形式知化されたデータを活用しつつ、意思決定と実行までの一連のフローを構築できる。なお、AIPはプロンプト処理におけるLLMの思考過程(推論ステップ)を可視化し、プロセスの確認・改善ができるデバッガ機能を備えており、意思決定プロセスの透明性と改善を支援する。各ブロック単位での実行ログや出力確認も可能であり、プロンプトの精度向上やエラー分析に役立つ。
※1:AIPには複数の機能群が含まれるが、本稿では主に意思決定プロセスの設計に用いられるノーコード環境「AIP Logic」を中心に解説する。
※2:他にも、外部コードの実行、変数管理、条件分岐、ループ等を司るブロック及びツールが用意されている。
2. AIP を活用した意思決定プロセスの循環
AIPを活用することで、企業は判断材料の生成から活用・評価・改善に至るまでの一連の意思決定支援プロセスを、構造化かつ継続的に運用することができる。
- 生成:過去の事例データをOntologyから取得・分析し、その情報をもとに、LLMを活用してリスク評価や対応方針などの判断材料を生成する。
- 活用:生成された情報を、実際の意思決定プロセスに組み込む。
- 評価:意思決定の結果を振り返り、その内容や影響を分析・評価する。
- 改訂:評価結果に基づき、プロンプトや判断基準を更新・改善する。
- 再活用:改訂内容を次の意思決定に取り入れ、継続的な改善につなげる。
このような循環的なプロセスにより、意思決定の効率化・精度向上・リスク低減を実現し、競争力を高めていくことができる。
※以下の節と情報源は、PDF版全文をご参照ください
- 3. 導入・活用事例
- 4. まとめ(知見・示唆)
- 情報源一覧(出典リンク含む)
分析記事全文はこちらからダウンロードできます ↓
生成AI特集「海外企業の事例分析」Palantir